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Netflix、アマプラ、時々映画館 チョコをおともに見た映画の感想をBitter&Sweetに書いています。

映画レビュー『梅切らぬバカ』タイトルの意味が深い。

Netflixで配信中の加賀まりこさん主演映画『梅切らぬバカ』を見ました。

梅切らぬバカ[DVD]

あらすじ

 山田珠子は自閉症の息子忠さん(ちゅうさん)と古民家で二人ささやかに暮らしていた。隣に越してきた里村家から梅の木が邪魔だと苦情が届く。忠さんの将来を案じていた珠子は、梅の木を切る前に、忠さんをグループホームへ入れることを決意する。

作品データ/主要キャスト

加賀まりこ/山田珠子

 忠男の母で自宅で占い師をしている。息子をグループホームに入れる決断をする。

塚地武雅/山田忠男

 珠子の自閉症の息子、忠実な男と書いて忠男だが、呼び名は忠さん(ちゅうさん)。
 時間に忠実に暮らし、馬が好きな49歳。 

渡辺いっけい/里村茂

 山田家の隣に引っ越してきた里村家の亭主。ややこしいことは妻任せ。
 責任を取りたくないタイプ。忠さんにも冷たい。

森口瑤子/里村英子

 里村茂の妻。夫に不満をためつつも、そのまま振り回されてる。

・斎藤汰鷹/里村草太

 茂と英子の一人息子。忠さんの友達。

公開年:2021年/監督︰和島香太郎 /脚本:和島香太郎 /配給︰ハピネット・ファントム・スタジオ

解説ka

“梅切らぬバカ”タイトルの意味とは…。

 ことわざ【桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿】は木々の剪定にはそれぞれの木の特性に従って対処する必要があるという戒め。転じて、人との関わりにおいても、性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事という意味。

 実生活でも自閉症の息子さんを育てていることを公表している加賀まりこさんは本作が54年ぶりの主演映画。いくつもの役を演じてきた個性派俳優でもある塚地武雅さんが息子役を好演。

 

*以下ネタバレしますので、未見の方はご注意ください。

『梅切らぬバカ』感想

梅の木の存在

 本作は、お隣さんが引っ越してきたことによって、自閉症の息子と高齢な母親の暮らしに変化が訪れます。お隣さんから、外にはみ出している梅の枝が危ないから切るように言われれるのです。その夜、誕生日ケーキのろうそくを吹き消そうとした忠さんがぎっくり腰になり、二人そろって床に倒れこんで、珠子さんは決意します。梅の木を選定すること、それが終わったら息子をグループホームに入れようと。
梅の木の枝が伸び放題だったことを気づいていなかったわけではありません。「梅切らぬバカ」ということわざを知っていたけど珠子さんは切らなかった。切ろうとすると、忠さんがパニックになるから。だけどそれだけじゃなくて、その木を植えたのは忠さんの父親だったから。育てている忠さんをずっと見ておいてほしかったから切らなかった。
そして、普段の暮らしに変化をもたらすことは、親子の関係においても変化をもたらすことでもある。息子をグループホームに入れること=自立ではあるけれど、親離れは子離れでもある。子どもにとっては必要なことも、親にとっては手放しで喜んでできるのかというのはまた別の決心がいる話なのです。

 お誕生日ケーキのネームプレートをさっさと取って食べ、年齢の数だけたてたろうそくに火をともして、早々と吹き消してしまう忠さん。二人転がって重くない感じで重い決断をする。私の一番好きなシーンです。

里村家の修復

 里村家にとってもこの引っ越しは変化をもたらします。草太が広い家に住みたいといったから引っ越しを決めた茂。お隣さんに障害のある親子が住んでいることを引っ越してきた日に知り、ろくに調べてなかったのがわかります。唐突に自分の思い込みで動いて、面倒なことはすべて英子に押し付ける典型的な旦那さんです。それに不満をためながらも従う英子。二人は自閉症の忠さんを見て面倒な奴と煙たがり、あしらいます。

 でも草太は、引っ越しの時になくしたと思っていた野球のボールを忠さんが届けてきてくれたことに気づき、友達になります。
 学校帰り、草太はグループホームを抜け出してきた忠さんと遊びに出かけ、町民を巻き込むトラブルに発展。そのせいでグループホームの運営反対の風は強まり、忠さんは実家に戻る羽目になります。責任を感じた草太は両親に自分のせいだと打ち明ける。
あの両親に育てられた割に草太は本当に素直で。子どもって時に鋭く悪気なく毒を吐いたりするけれど、偏見なく事実だけを受け止める力があって、素直でいいよなぁって。半面、茂は息子の失態を詫びに来たはずなのに、山田家でお酒飲んでいい気分になって翌日からさらっと心変わりする。息子が失敗したって謝らないままなのに、なぜにそんなに改心したのか?展開としてはちょっと疑問は残りました。

単に障害のある親子の話ではない。

 たまたまこのケースは自閉症の息子だったけれど、現代には中年ニートと高齢な親の問題。また、家族関係に限らず、気になってはいるけどまだ動く気持ちになれないことは、人によってさまざまありますよね。そういう視点で本作をみると、単に障害のある親子の話ではなく、いろんな見え方、気づき、心の変化をもたらしてくれるのが本作。

▶こんな人におすすめ

  ・ヒューマンドラマが好き
  ・塚地武雅さんが好き
  ・ちょっと先延ばしにしていることがある人

★★★★