映画『ハケンアニメ!』誰か一人に刺さればそれでいいと思える
第46回日本アカデミー賞で存在を知った『ハケンアニメ』をNetflixで見てみました。
あらすじ
人の心に残るアニメを作りたいとアニメ界に転職した斎藤。初めての監督作品で、あこがれの王子監督と同時間帯を戦うことに。癖の強いチーフプロデューサー行城に振り回されている。一方の王子監督は、天才として名声を得るも8年間ヒットはなし。有科とタッグを組み再起を狙う。同世代同士が、最も成功した作品に捧げられる称号「ハケン」を目指し、日々闘うアニメ業界の裏側を総会に描くエンターテインメント!
作品データ/主要キャスト
・吉岡里帆/斎藤瞳
新人アニメ監督
・中村倫也/王子千晴
伝説の天才監督
・柄本佑/行城理
斎藤監督のチーフプロデューサー
・尾野真千子/有科
王子監督のチーフプロデューサー
・小野花梨/並沢和奈
原画アニメーター
公開年:2022年/監督︰吉野耕平/脚本:政池洋佑/配給︰東映
解説
辻村深月の原作小説を映画化。期待の新人監督と天才と呼ばれる崖っぷち監督の同年代がアニメ界の頂上を目指して火花を散らす。裏側を描くエンターテインメント!
*以下ネタバレしますので、未見の方はご注意ください。
感想
失礼ながら、タイトルだけでアニメ作品だと思って、まったく視界に入っていなかった本作。それが日本アカデミー賞に俳優の皆さんが登場されて、実写映画なのだと知ったのです。
熱量に共感する
モノ作りを始めるきっかけ、誰かへのあこがれ、何かへの感謝、届けたい気持ち。その気持ちの譲れない部分を譲らない潔さに、その一人を1作を作り上げて誰かに届けることに懸命になる大人たちに、すごく共感してすごく勇気をもらいました。
アニメーションが動いて競り合いを表現するところはちょっとボヤッとしたキャラクターでわかりにくいな、と思ったけど。視聴者の一般論を巻き込んで表現しているところは今っぽい。
想定以上に面白くて、私はもうすっかり大人だけど、年齢など関係なく何かを作りたい思いは捨てなくて、持ち続けて、1本でも何かを残したいという思いを改にしました。
並沢さん
私の好きなキャラクターは、アニメーションの並沢さんです。普通に休みを取ってデートを楽しみたい、好きな人からのプロポーズにあこがれる普通の女の子。でも、自分のアニメーションには自信を持っているから、人の環境で描いたものに自分の名前は載せたくないっていうのもよくわかる。普通っぽい女の子とプロの嗜みの部分が共存しているのがすごくよかった!どっちかだけの人間なんていないから。どっちもあっての並沢さんだから。てっぺんを目指す作品の中の人も、そういう両面があっていいんだっていうのを描いているのも、なんだかほっこりする。
リア充の定義と刺さること
工藤阿須加さん演じる宗森さんとの「リア充」定義のやり取りもすごく熱くて、天才王子監督の誰に届けたいかという対談での語りと相まってくるものがあった。
映画やドラマの視聴方法が多様になってもいまだに視聴率ばかり争いがちなテレビに対してもちょっとくぎを刺しているというか。商業的にみると売れる、バズる、視聴率が高いのは次につなげるためには大事なのだけど、作り手とすれば、スポンサーだプロデューサーだのの意見を取り入れざるを得ず、自分の思い描くものを寸分狂わず作れるほうがむしろ難しい。でも、本来は大衆に受けるより、たった一人の誰かに刺さればそれで、いやそれが大事なんだよって声を大にして言いたい。
久々にみてよかったと思える日本アカデミー賞関連の作品でした。
▶こんな人におすすめ
・アニメの世界にあこがれている
・エンターテインメントが好き
・アカデミー賞関連作が見たい
★★★