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Netflix、アマプラ、時々映画館 チョコをおともに見た映画の感想をBitter&Sweetに書いています。

映画『浅田家』写真が映し出す家族のカタチ

 日本アカデミー賞授賞式まであと1時間を切りました。そして明日は東日本大震災から12年を迎えます。この作品の誕生には、日本アカデミー賞が、内容には東日本大震災が大きく関わっています。なので今日はこれをどうしても見たくて見ていました。

と書いて寝落ちしたので…本日加筆して公開します。

浅田家! DVD 通常版

あらすじ

 浅田家の次男政志は写真学校の「一生にあと1枚しか写真が取れなかったとしたら何を撮る?」というお題に「家族」を選ぶ。家族をテーマに撮りためた写真をもって、東京に出るも相手にされず。やっと出した写真集で木村伊兵衛賞を受賞。いろんな家族写真を撮り自信をつけた矢先、初めての依頼者が東日本大震災で被災する。

作品データ/主要キャスト

二宮和也/浅田政志

 浅田家の次男、写真家

妻夫木聡/浅田幸宏

 浅田家の長男

風吹ジュン/浅田順子

 政志の母。看護師として家族を支える

平田満/浅田章

 政志の父。どういうわけか主夫

黒木華/川上若菜

 政志の恋人

公開年:2020年/監督︰中野量太 /脚本:中野量太 菅野友恵 /配給︰東宝

解説

 写真家・浅田政志さんの写真集『浅田家』『アルバムノチカラ』を基にした実話ベースの映画です。あくまで実在する浅田家の家族のお話を描かれていますが、ご本人を語るうえで、東日本大震災の写真洗浄ボランティアという、メディアではあまり取り上げられてこなかった部分をカメラマンの目線を通して描かれています。

ですので、東日本大震災の避難所などでの様子も含まれます。後半、1時間2分を過ぎたあたりで揺れを感じるシーン(当時の映像化は分かりませんが)震災を伝えるテレビニュースなどトータルで2~3分ほど映し出されます。また、避難所での写真洗浄ボランティアの活動では当時の街を再現したシーンも併せて出てきます。無理してご覧にならないよう、ご自分のお気持ち優先でご判断ください。

*以下ネタバレしますので、未見の方はご注意ください。

映画『浅田家!』感想

 二宮さんの起用理由

 本作に二宮さんが起用された理由に、日本アカデミー賞が深く関係しています。日本アカデミー賞のプレゼンターを務められたとき、中野監督の受賞作『湯を沸かすほどの熱い愛』という映画のタイトルを読み間違えた二宮さん。
ご自身も下の名前『和也』”かずなりさん”を”かずや”さんと読み間違えらえることが多く、名前は間違ってはいけないと思っていたのにと悔いて「僕にできることがあれば何でもします」と謝罪のお手紙を監督へ送られたご縁で本作のキャスティングが決まったそうです。

 もし、あの時間違ってなかったら?この映画は生まれていたのか、どんなテイストになっていたのか。正直気になりますが、私としては、政志・二宮和也さん、兄・妻夫木聡さん、父・平田満さん、母・風吹ジュンさんの『浅田家!』が最高に楽しくて大好きです!

家族の物語 

これは浅田政志というカメラマンのカメラマン半生をつづるとともに、東日本大震災での写真洗浄活動の記録の一端でもある。

 前半は浅田家の家族のシーンで、ずっと笑いながら泣いてました。

 12歳の誕生日に始めて撮ったのが家族の写真。そのころからもう写真家浅田政志さんの道は決まっていた気がする。卒業が危うい起死回生の課題提出も家族写真。東京へ一旗上げに行くと決めたのも撮りためた家族写真に自信があったから。家族って切っても切れない(切りたくても切れない)最小のコミュニティーだから、その人にしか撮れないものは確かにあるわけで、専門学校へ行くのに里を離れてしまったから、取りたいものが見えなくなったんだろうなと思う。何より好きでないと撮れない。

 私がいつも笑ってしまうのは、学校を出ても何も取らない仕事もしない弟に夕飯を食べながら説教をするシーン。
お兄ちゃんが政志に言う。「無職で家でたらたらして、そんな人どこにおるねん」(ニュアンス)と。でもすごく近くにいる。
 お父さんだ。お父さんは浅田家の場合お義母さんの看護師の仕事を支えるために、主夫になった。それを揶揄するわけではなくて、クスッとした笑いの場面になっている。それができるのは、まだ主夫が家庭を支える形はマイノリティかもしれないが、浅田家が幸せな家族として存在して、描かれているから見ている側も遠慮なく笑えて泣ける。

 お兄ちゃんが餞別に浅田家の木のアルバムを送るのも、お母さんが「あんたはあんたの好きなことしなさい」って初めてビンタするのも、愛が深くて涙があふれてくる。ビンタの痛みは見ている私にまで届いてきた。

若菜ちゃんに惚れてまう!

 もう一人忘れてはならないのが、政志の恋人・若菜ちゃん。小学校の頃の初恋からの長い付き合になる彼女は、ある意味我慢強い。そして何より政志に甘い。惚れているから仕方がないが、あんなあほぼんさっさと捨てて都会の男をみつけたらええのにと思う。黙って政志を見守って、秘かに応援して、もう、政志にはもったいないいい娘だと思う。

 適齢期どころか長く春を過ごしてやっとの思いで一生に一度の賭けに出る。テレビの前であいつでいいんか?と思いつつ、カッコよさに拍手喝采である。

東日本大震災、写真洗浄ボランティア

木村伊兵衛写真賞を受賞して、政志は浅田家以外の家族写真を撮り始める。家族の数だけ思い出があって、それを如実に現した家族写真。始めて撮ったのが東北の高原家。

そして、2011年3月11日、東日本大震災が起こる。

 高原家を案じて被災地へ向け車を走らせても家はそこになく、安否がつかめない。情報を求めて向かった避難所で写真洗浄をしている青年と出会う。滞在して手伝ううち、壊れた家屋や探し求める人たちを撮っていくメディアや素人カメラマンを横目に、撮っていいのか?とまた撮れなくなって、被災少女莉子ちゃんの家族写真の依頼も断ってしまう。

 このあたりの展開は作品上のフィクションだけど、それを見てふと思い出したのが、離れて暮らす父のこと。
カメラマンをしていたが、この当時はファインダーを覗くのではなくて、カメラや写真にかかわらない別の形で福島のボランティアをしていた。と後になって聞いたことを思い出した。記録として必要だとしても撮れなかったと思うし、多少カメラをたしなむわたしも別の形を模索しただろうと思います。
そういう側から見ると、政志さんは実家に一度戻って、撮る意味を見つけて、莉子ちゃんの家族を撮ることができた。

3.11に想いを寄せる

 家族のあり方も、写真をとる意味も、今日という日に東北や大事な人を想う形も、千差万別。
私は阪神大震災を経験しているので、1.17に何か今日あったっけ?と思われるのは少し凹みます。震災を風化させてはいけない。でも何も静かに故人を偲ぶことがすべてだとも思いません。

 今日生まれた子は12歳。カメラをもらった政志君と同じ年になりました。おめでとうございます。笑ってケーキ食べるのだって、なりたいものを描いてみるも、もちろんいいんです。

WOWOWで放送予定

本作を見て過ごすのも一つです。本日12時45分~15時までWOWOWにて放送予定があります。よかったらリアルタイムで見てください。また本日現在、アマゾンプライムビデオでも配信中です。

 

▶こんな人におすすめ

  ・家族が好き、好きになれない
  ・写真やカメラマンに興味がある
  ・3.11に想いを馳せたい

★★★★

↓こちらが本物の「浅田家」家族写真!

浅田家

浅田家

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